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M美さんのドッペルゲンガー譚をまとめていて、ふと思い出した。わたしにも似たような体験があったのである。もっとも、わたし自身のドッペルゲンガーではないのだが。
Kさんはわたしの高校時代の同期だ。彼はその当時、高萩市の自宅から日立市の会社に電車で通勤していた。
ある日の夕方、わたしは高萩市内にある書店に入った。見れば、店内の中央付近に、何やら本を物色しているKさんがいる。帰宅途中に立ち寄ったのだろう。
Kさんと合うのは久しぶりだ。わたしは声をかけようとして、彼に近づこうとした。
しかし、わたしは違和感を覚え、足を止めた。目も鼻も口も髪型も背格好も仕草も、まさしくKさんなのだが、何かが違う。
一方のKさん……いや、Kさんらしき人物は、わたしに一瞥もくれず、何も買わずに店を出ていってしまった。
数日後、高萩市の街中を車で移動していたわたしは、またしてもKさんらしき人物を目撃してしまった。あちらはわたしに気づいていないようだ。どう見てもKさんなのだが、何かが違う。やはり他人のそら似なのだろうか。
その後、わたしはこの「Kさんもどき」を高萩市の街中で何度もみかけることとなった。
それからさらに数日が経ったある日、とある駅のホームで、わたしは再びKさんらしき人物を目撃した。さすがにひるんでしまったが、なんとKさんらしき人物のほうから「よう、久しぶりだね」と声をかけてきた。本物のKさんだった。わたしは胸をなで下ろした。
しばらくの雑談ののち、わたしは尋ねてみた。
「先月だったかなあ……高萩の書店で会ったよね?」
しかしKさんは、あの書店にはその日は行かなかったという。そしてこう付け加えた。
「最近ね、良く言われるんだよ。おまえをどこそこで見かけた、って。どうやらおれに似た人がいるみたいだね」
「似た人?」
つまり、他人のそら似だったのだ。そういえば、その似た人はKさんとは決定的に異なる特徴があった。同じ髪型でも白髪が多いのだ。書店にいた人物も、車中から見かけた人物も、である。本人を前にして、ようやくその違いがわかった。
「でもね」Kさんは続けた。「その人、同じ高萩市に住んでいるみたいだけど、おれは一度も見たことがないんだよ」
似た人が存在していることより、その似た人を本人が一度も見ていない、というのが、なぜか気になった。
「同じ高萩市に住んでいるのに?」
わたしは首を傾げたが、Kさんは笑う。
「偶然だよ。似た人が近くに存在するのも、その人に会えないのも。それより、どれくらい似ているのか気になるから、会ってみたいよね」
超常現象肯定派なら「そりゃあ、ドッペルゲンガーなんだし、会わなくて良かったんじゃないの」と言うところなのだろうが、わたしは否定派というか懐疑的であるため、Kさんの言うとおり、おそらく偶然なのだ、と思っている。
だが、なんとなく気になるのだ。
ドッペルゲンガーについてネットで調べてみると、いろいろな説があった。その中に、「異次元の自分・未来の自分」というものがあった。
わたしが見かけたKさんのそっくりさんは、何もかもがKさんと同じだったが、白髪が多かった。