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当ブログは「茨城県妖怪探検隊」のコンテンツです。茨城県在住の方が体験した「怖い出来事」、もしくは茨城県内で起きた「怖い出来事」を、文章として起こしたものです。 当ブログに掲載する恐怖体験には超常現象的でないものも含まれます。怪談実話ばかりではないことをご了承ください。 また、体験者や関係者のプライバシーを考慮し、一部の内容を修正してあります。
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「世の中には自分と瓜二つの人間がいる」

 こんな台詞を聞いたことのある人はいるだろう。

 わたし自身としては、自分に似ている人間が三人もいたらたまったものではない。もっとも、単なるそっくりさんなら、「世の中に三人」どころではないはずだ。

 問題なのは、自分と寸分たがわぬまったく同じ人間がいたらどうなのか、ということである。同じ人間というより、「もう一人の自分」としたほうがわかりやすいかもしれない。

 医学ではもう一人の自分が見えてしまうことを「自己像幻視」という。脳機能の一部が損なわれることによって起こる症状であり、幻覚の一種である。

 幻覚ではなく、自分から分離した分身や、自分自身の生き霊、自分になりすました悪魔など、超常現象としての「もう一人の自分」がある。超常現象として現れたもう一人の自分を見てしまった場合、もっぱら、自分は死んでしまうらしい。

 こういったもう一人の自分が出現する現象を、幻覚や超常現象を問わず、ドッペルゲンガーと呼んでいる。

 

 前出のM美さんの話である。

 これもやはり彼女が高校生のときのことだ。

 下校中のバスに乗り合わせた友人に「そういえば、この前、途中の停留所でバスを降りたよね?」とM美さんは尋ねられた。しかしM美さんは身に覚えがない。

「降りていないよ」

 M美さんが答えると、友人は首を捻った。

「本当? 声をかけようと思ったんだけど、途中で降りたから……何か用事でもあるのかなあ、って思ったの」

 友人のそんな話を聞いたM美さんだが、深くは考えなかった。似ている人などいくらでもいるのだ。

 数日後、下校時間になり、M美さんはいつものバスに乗った。後ろのほうの席に座ってバスに揺られていたM美さんは、ふと、気づいた。

 中ほどの席に一人の女の子が座っていた。後ろ姿だが、M美さんはその女の子の年格好が自分に似ているような気がした。

――あの子がわたしのそっくりさんに違いない。

 だが良く見ると、制服も髪型も髪を縛るゴムの色も、すべてがM美さんと同じではないか。そっくりさんというより、もう一人のM美さんである。

 M美さんの背筋に冷たいものが走った。

 途中のバス停でその女の子は下車した。出口に向かう後ろ姿をまじまじと見たが、やはりM美さんと同じである。

 M美さんが座っている席はバスの左側だ。降りた女の子はバスの後ろ側に歩いてきたため、顔を確認することはできそうである。

 しかし、M美さんはそれができなかった。

 硬直したまま目を逸らした――目を逸らしたのだが、その女の子がこっちを見ている、そんな気がしてならない。

 時間が長かった。このままでは、窓の外に目を向けてしまいそうだ。

 体が小刻みに震えていた。

 緊張の糸が切れかかったそのとき――

 やっとバスが動き出した。

 

 後日、M美さんは友人に、「その女の子って、顔もわたしとそっくりだった?」と尋ねてみた。しかし友人も、その女の子の顔は見ていなかったという。

 その後、M美さんにそっくりな女の子が現れることはなかった。

 今となっては真相を確かめるすべはないが、M美さんはそれで良かったのだと実感している。

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茨城県妖怪探検隊の隊長をやっています。
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