×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
くどいようだが、わたしは心霊現象を信じもしないし、それらが見えるわけでもない。だが世の中には、見えてしまうために損をするという方々がいる。「霊」を見てしまい、せっかくの楽しい時間をスポイルされてしまうのだ。それを思えば、見えないあなたは幸せである。
茨城県妖怪探検隊の隊員である「よしくんさん」は、整体師であり、その腕はお墨付きだ。そしてもう一つの彼の特技は、見てしまうことである。
一緒に出かけても、「ここはやばいな」とか「そこにいるんだよ」と訴えるものだから、信じる人にとっては怖くてたまらないだろう。無論、信じないわたしにしてみればどこ吹く風なのだが。
さて、そんなよしくんさんの「楽しい時間をスポイルされてしまった」という体験である。
よしくんさんは仕事柄、平日が休日だ。その休日に、彼はよく温泉や露天風呂に出かける。
梅雨とあって曇りがちな日だった。しかしせっかくの休日なのだ。よしくんさんは思い立って車で出かけた。
行き先は海の近くにある露天風呂だった。ぱっとしない空模様のうえに平日だったが、客はそこそこ入っていた。
眺望できる広い湯船にどっぷりと浸かったよしくんさんは、「やっぱ人生このときのために生きてるようなものよね」と口に出かかったが、ほかの客の手前でもあり、また自分の年を考えて押し黙った。
見上げれば灰色の空だが、白だろうが青だろうが、広ければ構わなかった。この心地よさは何ものにも代えがたい。
何げに視線を下ろした。どんよりとした空の下には、これまた灰色の茫漠たる太平洋があった。その海の彼方に、黒くてもやもやした何かがが蠢いていた。
「何だろう……煙じゃないよなあ」
目を凝らしていると、黒いもやもやがなんらかの形を取り始めたではないか。
「なんか、やばそう」
もう出たほうがいいかもしれない、そう思ったときだった。
黒いもやもやが露天風呂のほうへと向かってきたのだ。しかも、それは人の形だった。
声も出せず、ただ無言のまま、よしくんさんは立ち上がって脱衣所へと急いだ。
周りの客にはその黒いもやもやが見えなかったに違いない。彼らに見えたものといえば、よしくんさんの立派な黒いもやもやだけだったろう。
一緒に出かけても、「ここはやばいな」とか「そこにいるんだよ」と訴えるものだから、信じる人にとっては怖くてたまらないだろう。無論、信じないわたしにしてみればどこ吹く風なのだが。
さて、そんなよしくんさんの「楽しい時間をスポイルされてしまった」という体験である。
よしくんさんは仕事柄、平日が休日だ。その休日に、彼はよく温泉や露天風呂に出かける。
梅雨とあって曇りがちな日だった。しかしせっかくの休日なのだ。よしくんさんは思い立って車で出かけた。
行き先は海の近くにある露天風呂だった。ぱっとしない空模様のうえに平日だったが、客はそこそこ入っていた。
眺望できる広い湯船にどっぷりと浸かったよしくんさんは、「やっぱ人生このときのために生きてるようなものよね」と口に出かかったが、ほかの客の手前でもあり、また自分の年を考えて押し黙った。
見上げれば灰色の空だが、白だろうが青だろうが、広ければ構わなかった。この心地よさは何ものにも代えがたい。
何げに視線を下ろした。どんよりとした空の下には、これまた灰色の茫漠たる太平洋があった。その海の彼方に、黒くてもやもやした何かがが蠢いていた。
「何だろう……煙じゃないよなあ」
目を凝らしていると、黒いもやもやがなんらかの形を取り始めたではないか。
「なんか、やばそう」
もう出たほうがいいかもしれない、そう思ったときだった。
黒いもやもやが露天風呂のほうへと向かってきたのだ。しかも、それは人の形だった。
声も出せず、ただ無言のまま、よしくんさんは立ち上がって脱衣所へと急いだ。
周りの客にはその黒いもやもやが見えなかったに違いない。彼らに見えたものといえば、よしくんさんの立派な黒いもやもやだけだったろう。
「おれが急に立ち上がって出ていったから、周りの人は変に思ったかも」
よしくんさんは最後にそう付け加えた。
ほかの客にとっては、よしくんさんが出ていったあとも、ずっと幸福な時間だったわけである。
よしくんさんは最後にそう付け加えた。
ほかの客にとっては、よしくんさんが出ていったあとも、ずっと幸福な時間だったわけである。
PR
カレンダー