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当ブログは「茨城県妖怪探検隊」のコンテンツです。茨城県在住の方が体験した「怖い出来事」、もしくは茨城県内で起きた「怖い出来事」を、文章として起こしたものです。 当ブログに掲載する恐怖体験には超常現象的でないものも含まれます。怪談実話ばかりではないことをご了承ください。 また、体験者や関係者のプライバシーを考慮し、一部の内容を修正してあります。
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 わたしの小学校時代の話である。
 自宅近所の田んぼの外れに篠の藪があったのだが、わたしは数人の仲間とともにその一部を整備して、いわゆる秘密基地にしていた。
 ある日、わたしたちはいつものように秘密基地で遊んでいた。どんな用事があったのか、また、どんな遊びをしていたのか忘れてしまったが、ともかくわたしは、その秘密基地に隣接する田んぼを走っていた。
 農閑期であり、田んぼに水はなく、稲の切り株がぼつんぼつんと残されている状態だった。まともに走れる状態でないのは、大の大人が考えればわかるだろう。案の定、わたしはその稲の切り株につまずいてうつ伏せに転んでしまった。擦り傷くらいは負ったかもしれないが、少なくとも大した怪我はしていなかった。
 起き上がろうとしておもむろに顔を上げたわたしは、ぎょっとした。顔のすぐ左隣に、篠の切り株があったのだ。明らかに刃物で切った跡であり、切り口は斜めに一直線である。竹槍の先端のごとしだ。わたしの転倒した場所があと十センチも左にずれていたら、篠の切り株が左目を貫いていたかもしれない。
 怖いものからは無意識のうちに目を逸らすものだ。起き上がる途中の姿勢で固まったまま、わたしは右に顔を向けた。
 すぐ目の前、ちょうど篠の切り株の反対の位置に、猫がこちらに顔を向けて横になっていた。
 わたしは息を呑んだ。
 猫は目を見開いてわたしを凝視していた。しかし、開いているのは、左右どちらかは忘れてしまったが、片方の目だけである。もう片方の目は、ただの穴だった。
 猫は動かなかった。息をしている様子もない。
 一匹の蠅が、そのただの穴を出入りしていた。
 わたしは飛び起き、仲間たちの元へと走った。
 事情を伝えると、好奇心に駆られたのか、仲間たちは猫の死骸のほうへと走った。わたしはもう見たくないため、遠巻きに仲間たちの様子を窺っていた。
 猫の死骸の前で足を止めた仲間たちは、ほんの一瞬、呆然としたかと思うと、すぐに向きを変え、「うわーっ!」と叫びながらこちらに走ってきた。
 あとになって、わたしは仲間の一人に言われた。
「あの猫、自分と同じ目に遭わせようとして、あそこに呼んだんじゃないのかな? それでさ、わざと転ばせたんじゃないかな?」
 だとしても、どうしてわたしが標的なのだろう。わたしが生前のあの猫に何かしたというのだろうか。そんな覚えはまったくない。
 いや、覚えがないだけで、何かしていたのかもしれない。だいたい、人に嫌われることなんてした覚えがなくても、実は何かしでかしていた……ということがあり得るくらいのだから。

 わたしが自宅の庭で野良仕事をしていると、どこからともなく白い猫がやってくる。週に二回ほど顔を合わせるだろうか。その猫は、わたしが作業しているそばまで来ると、ごろんと横になって寝てしまう。場合によっては思いっ切り仰向けという油断し切った姿である。
 今のところ、この猫には嫌われていないようだ。

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プロフィール
HN:
士郎
Webサイト:
性別:
非公開
自己紹介:
茨城県妖怪探検隊の隊長をやっています。
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