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当ブログは「茨城県妖怪探検隊」のコンテンツです。茨城県在住の方が体験した「怖い出来事」、もしくは茨城県内で起きた「怖い出来事」を、文章として起こしたものです。 当ブログに掲載する恐怖体験には超常現象的でないものも含まれます。怪談実話ばかりではないことをご了承ください。 また、体験者や関係者のプライバシーを考慮し、一部の内容を修正してあります。
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日立市のYさんの話である。

Yさんの友人にDさんという男性がいる。
Dさんの自宅はお世辞にもきれいとは言えない。すなわちぼろ屋である。
そのぼろ屋のリビング、奥の部屋、奥の部屋の通路の柱に、御札(おふだ)が貼ってあった。特に通路は、嫌な雰囲気があるため、Dさんはあまり近づかなかった。御札が貼ってあるわけをDさんは知らなかった。尋ねることさえなんとなく避けていた。かかわりたくなかったのだ。

ある日、Dさんは一人で留守番をしていた。
しばらくすると、奥の部屋で人の気配がした。
泥棒かもしれない――
気になったDさんは、奥の部屋へと行ってみた。
その部屋には縦長の大きな鏡が置いてあり、その鏡と向かい合う位置にある押し入れと、タンスがあるだけだった。人がいるとすれば、押し入れの中だけだ。もしくは、通路の窓から外に出たのかもしれない。
確認してみたが、結局、押し入れにも外にも誰もいなかった。
安堵したDさんは、何気なく鏡を見つめた。
昼間でも暗い部屋だ。まして夕方であり、照明をつけていなかったため、ほぼ闇である。
不意に、鏡に何かが映った。
自分の背後に何かがいたような気がしたDさんは、再度、後ろの押し入れに近づいた。
しかし、やはり何もなく、Dさんはその部屋を出ようとした。
そのとき――
何かがDさんの片方の足首を握った。
足元を見下ろしたDさんは、息をのんだ。
床から伸びている手が、Dさんの足首を握っているのだ。
手の力は徐々に強くなっていく。
Dさんは卒倒しそうだった。
そして、そこからの記憶は、曖昧になってしまった。
つかまれたところは痣になり、しばらくは消えなかった。

現在、その家には誰も住んでおらず、御札がそのまま貼ってあるのか、定かでない。
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 数年前の晩秋のある日、わたしは妻と連れ立って滝で有名な県北部の某観光地へと車で出かけた。その滝は日本の三大名瀑と言われるほどであり、おそらく県内で知らない人はいないはずだ。
 もっとも、その日のわたしたちにとって滝を愛でるのは二の次だった。一番の目的は、柄にもないが山歩きだったのである。
 滝のすぐ手前の向かって右側と、滝のかなり手前の向かって左側に、登山口がある。この二つの登山道は、滝の上流のほうで浅瀬を渡る、という形で繋がっている。
 わたしたちは滝から五百メートル以上も手前の市営駐車場に車を停め、そのすぐ目の前にある登山口――すなわち滝からかなり手前の向かって左側の登山口に足を踏み入れた。
 もっとも、その当時のわたしは山を侮っていた。緩めのワークシューズにPコートというなめ切った装備だった。観光客で賑わう滝の前の通りから見上げれば、かなり切り立った峻険な山々であるが、一帯は観光地として開発された土地であり、それに隣接する山など恐るるに足らず――という観念がわたしの中にあったのは事実である。
  一方の妻は曲がりなりにもトレッキングシューズを着用しており、最低限の心得はあったようだ。
 ともあれ、わたしたち夫婦は山林の中の道を進み、人里から次第に離れていった。
 歩き始めは緩やかな傾斜の上りだった。つい、「やっぱり、なんてことはないな」と軽口を叩いてしまう。
「そんなに甘くはないと思うけど」
 妻はしかつめらしく言った。
 わたしはこの時点ではまだのんきなものだった。
 やがて、みちは右へ左へと蛇行を始めた。傾斜は徐々にきつくなる。
「まあ、この程度なら」
 空元気にもほどがあると自分で思った。何せ、靴の中では足が滑ってしまい、踏ん張りがきかなくなっていたのだから。
 そして、傾斜はさらにきつくなった。近くの木に手をかけないと、とても上れないほどだ。
 ふと見れば、妻の背中ははるか先だった。
「おーい、普通は待っているだろう!」
 叫ぶと、妻はさらにペースを上げた。
 ほかに登山客はいない。すれ違う人がいなければ、あとについてくる人もいない。かなり前を先行する妻がいるだけだ。
 やっと追いついたと思えば、妻は足を止めていた。そこそこ見晴らしの利く場所である。
「頂上?」
 わたしが尋ねると、妻は目の前の巨大な岩を指差した。
「頂上はこの上。その先に滝の向こうへと続く道があるんだよ」
 巨大な岩は、その上がどうなっているのか、わたしたちの立っている位置からでは窺い知れない。ほぼ垂直に立ち上がった岩肌に、鉄製の図太い鎖が垂れている。
「これを使って上れ、ってか?」
 そう口走って、わたしは唖然とした。どう見ても、二メートルか三メートル、もしくはそれ以上の高さがある。
 さすがの妻も、「うーん、無理だな」とこぼした。
「じゃあ、一休みしてから戻ろうか」
 わたしがそう言ったときだった。
 笑い声や話し声が聞こえた。
 わたしたちは顔を見合わせた。
 声は岩の上から聞こえてくる。複数の人がいるらしい。
「誰かいるんだね」
 妻は言うが、わたしは「でも、この声は……」と首を傾げた。
 それらはどれも、中年の女性と思われる声だった。何が楽しいのか、げらげらと笑いながら会話しているのだ。
「すぐ上だよ、おばちゃんらの声」
 妻の言葉どおり、十メートルと離れていない位置に、何人かの女性がいるのは確かだ。
「まさかと思うけど、ここから上がったんじゃないだろうな」
「反対側から来たんだよ」
 妻の言葉にわたしは「そうに違いない」と首肯した。
 上からの声が続く中、しばらく休んだわたしたちは、ようやく下山の途についた。
 だが帰りも、妻はハイペースだった。
「おーい、帰りくらい一緒に歩こうよ!」
 そう叫んでも、妻の背中は徐々に離れていく。
 そのときだった。
 後ろから、先ほどの女性たちの声が聞こえてきた。
 あの岩からはかなり離れているはずだ。しかし声は、すぐ近くに聞こえる。振り向くが、姿はまだ見えなかった。
 わたしは急斜面を駆け下りた。足を滑らせ、落ち葉の上に転倒した。
 声が一斉に笑った。まるでわたしの大転倒を目の当たりにしたかのごとくだ。
 斜面の上を見上げるが、人の姿はない。しかし、笑い声はまだ聞こえる。
 中年の女性たち――いや、おばちゃんたちは、間違いなくあの岩を降りてきたのだ。
 わたしは再び走り出した。
 滑ろうが転ぼうがかまいやしない。得体の知れないおばちゃんたちに追いつかれなければ、多少の怪我はあえて負うつもりだ。
 いつの間にか本気走りになっていた。
 つづら折れで下のほうに妻の姿を見つけたが、案の定、彼女も本気走りである。もっとも、彼女にはおばちゃんらの声は聞こえていないだろう。
「おい、ざけんなよ!」
 叫んだわたしは、急カーブで曲がり切れずに草むらに突っ込み、またしても転倒した。
 起き上がり、走り出して耳を傾けると、おばちゃんたちの声は聞こえなくなっていた。
 傾斜が緩くなり、民家の屋根が見えてきた辺りで妻に追いついた。
 妻はすでにペースを落としていた。
「おい、おばちゃんたちが追いかけてきたんだぞ」
「何を言ってんだか」そして振り向いた妻は、目を丸くする。「本当だ」
「えっ」
 わたしは振り向いた。
 特に何もない。
 前に向き直ると、妻が走り出していた。
「ばーか」
 捨て台詞のようにそう言い、彼女はどんどん小さくなっていく。
「勘弁してください」
 すでに体力の限界に達していたわたしだが、よろよろと妻のあとを追った。
 あのおばちゃんたちを待ち伏せしてその姿を見てやろう、という気になれなかったのは、言うまでもない。

 わたしの話である。
 その当時、わたしは電車で通勤していた。片道だけでも五十分は電車に揺られていなければならなかった。前後の徒歩の時間も含めての往復時間は二時間半だ。
 その日は午前中で仕事を切り上げた。どうにも体調が悪かったのである。全身がだるく、頭痛がした。
 ビジネスバッグを片手に駅にたどり着いたわたしは、電車に乗る前に妻に連絡を取ろう、と思った。「早く帰るから、風呂を沸かしておいてくれないか」そう伝えようとしたのである。
 まだガラケーさえ一般的でない時代だ。わたしは駅前の電話ボックスに入った。
 アパートの自宅に電話すると、呼び出しが鳴ってすぐに「はい」と妻が出た。
「あ、おれ。今日は早く帰るから――」
「あんた、さっき来たでしょ!」
 こちらが言い切る前に、いきなり罵声を浴びせられた。
「なんだよ、何を怒っているんだよ?」
「いいから、さっさと帰ってきな!」
 そして、電話は一方的に切られてしまった。
 理不尽である。妻を怒らせるようなことをした覚えはない。
 釈然としないまま、わたしは電車に乗った。
 一時間近くの電車はつらかったが、通勤時間でないこともあり、幸いにも最初から席に着くことができた。
 ふらふらとした足取りでアパートに着くと、妻が玄関で出迎えてくれた。
「さっきのあれは、いったいなんだよ?」
 風呂の前に、妻の不機嫌の原因を知りたかった。
 私たちは居間で腰を下ろした。
「あたしもちょっと調子が悪くてね、ここでごろんとして寝ていたの」
 妻は語り始めた。
 昼の十二時を過ぎたばかりだったという。
 居間でうつ伏せになっていた妻は、人の気配を感じて目を開け、寝室のほうに顔を向けた。居間と寝室は和室であり、襖で仕切られているが、普段はその襖を開けたままにしていた。
 体調が悪いせいなのか、あまりのだるさに首しか動かせず、妻は横になったまま、寝室の畳を見つめていた。
 人の足が見えた。灰色のスラックスと白い靴下という組み合わせの一対の足だ。それが、寝室内を行ったり来たりしている。
 誰かが勝手に入り込んだ――妻はそう思った。ならば強盗の類いと疑って当然だろう。
 だが、そのスラックスと靴下には見覚えがあった。
 ――うちの旦那?
 そう、このわたしの足なのだという。
 その一対の足の持ち主は、しばらく寝室内を歩き回ると、いつの間にかいなくなってしまった。
 いずれにしろ、幽霊も妖怪も信じない妻が言い張っているのだ。わたしは泥棒に入られたのかと思ったが、ドアと窓のすべてに鍵がかかっていた。
 わたしがもうろうとして「早く横になりたい」と思いながら歩いていたちょうどそのとき、妻はごろんとなって夢を見ていたわけである。いい気なものだ。
「でもね、やっぱり夢じゃなかったよ。早く帰りたいと思って歩いていたんでしょ?」
 未だに妻は言い張っている。
 
 くどいようだが、わたしは心霊現象を信じもしないし、それらが見えるわけでもない。だが世の中には、見えてしまうために損をするという方々がいる。「霊」を見てしまい、せっかくの楽しい時間をスポイルされてしまうのだ。それを思えば、見えないあなたは幸せである。

 茨城県妖怪探検隊の隊員である「よしくんさん」は、整体師であり、その腕はお墨付きだ。そしてもう一つの彼の特技は、見てしまうことである。
 一緒に出かけても、「ここはやばいな」とか「そこにいるんだよ」と訴えるものだから、信じる人にとっては怖くてたまらないだろう。無論、信じないわたしにしてみればどこ吹く風なのだが。
 さて、そんなよしくんさんの「楽しい時間をスポイルされてしまった」という体験である。
 よしくんさんは仕事柄、平日が休日だ。その休日に、彼はよく温泉や露天風呂に出かける。
 梅雨とあって曇りがちな日だった。しかしせっかくの休日なのだ。よしくんさんは思い立って車で出かけた。
 行き先は海の近くにある露天風呂だった。ぱっとしない空模様のうえに平日だったが、客はそこそこ入っていた。
 眺望できる広い湯船にどっぷりと浸かったよしくんさんは、「やっぱ人生このときのために生きてるようなものよね」と口に出かかったが、ほかの客の手前でもあり、また自分の年を考えて押し黙った。
 見上げれば灰色の空だが、白だろうが青だろうが、広ければ構わなかった。この心地よさは何ものにも代えがたい。
 何げに視線を下ろした。どんよりとした空の下には、これまた灰色の茫漠たる太平洋があった。その海の彼方に、黒くてもやもやした何かがが蠢いていた。
「何だろう……煙じゃないよなあ」
 目を凝らしていると、黒いもやもやがなんらかの形を取り始めたではないか。
「なんか、やばそう」
 もう出たほうがいいかもしれない、そう思ったときだった。
 黒いもやもやが露天風呂のほうへと向かってきたのだ。しかも、それは人の形だった。
 声も出せず、ただ無言のまま、よしくんさんは立ち上がって脱衣所へと急いだ。
 周りの客にはその黒いもやもやが見えなかったに違いない。彼らに見えたものといえば、よしくんさんの立派な黒いもやもやだけだったろう。

「おれが急に立ち上がって出ていったから、周りの人は変に思ったかも」
 よしくんさんは最後にそう付け加えた。
 ほかの客にとっては、よしくんさんが出ていったあとも、ずっと幸福な時間だったわけである。

 わたしの小学校時代の話である。
 自宅近所の田んぼの外れに篠の藪があったのだが、わたしは数人の仲間とともにその一部を整備して、いわゆる秘密基地にしていた。
 ある日、わたしたちはいつものように秘密基地で遊んでいた。どんな用事があったのか、また、どんな遊びをしていたのか忘れてしまったが、ともかくわたしは、その秘密基地に隣接する田んぼを走っていた。
 農閑期であり、田んぼに水はなく、稲の切り株がぼつんぼつんと残されている状態だった。まともに走れる状態でないのは、大の大人が考えればわかるだろう。案の定、わたしはその稲の切り株につまずいてうつ伏せに転んでしまった。擦り傷くらいは負ったかもしれないが、少なくとも大した怪我はしていなかった。
 起き上がろうとしておもむろに顔を上げたわたしは、ぎょっとした。顔のすぐ左隣に、篠の切り株があったのだ。明らかに刃物で切った跡であり、切り口は斜めに一直線である。竹槍の先端のごとしだ。わたしの転倒した場所があと十センチも左にずれていたら、篠の切り株が左目を貫いていたかもしれない。
 怖いものからは無意識のうちに目を逸らすものだ。起き上がる途中の姿勢で固まったまま、わたしは右に顔を向けた。
 すぐ目の前、ちょうど篠の切り株の反対の位置に、猫がこちらに顔を向けて横になっていた。
 わたしは息を呑んだ。
 猫は目を見開いてわたしを凝視していた。しかし、開いているのは、左右どちらかは忘れてしまったが、片方の目だけである。もう片方の目は、ただの穴だった。
 猫は動かなかった。息をしている様子もない。
 一匹の蠅が、そのただの穴を出入りしていた。
 わたしは飛び起き、仲間たちの元へと走った。
 事情を伝えると、好奇心に駆られたのか、仲間たちは猫の死骸のほうへと走った。わたしはもう見たくないため、遠巻きに仲間たちの様子を窺っていた。
 猫の死骸の前で足を止めた仲間たちは、ほんの一瞬、呆然としたかと思うと、すぐに向きを変え、「うわーっ!」と叫びながらこちらに走ってきた。
 あとになって、わたしは仲間の一人に言われた。
「あの猫、自分と同じ目に遭わせようとして、あそこに呼んだんじゃないのかな? それでさ、わざと転ばせたんじゃないかな?」
 だとしても、どうしてわたしが標的なのだろう。わたしが生前のあの猫に何かしたというのだろうか。そんな覚えはまったくない。
 いや、覚えがないだけで、何かしていたのかもしれない。だいたい、人に嫌われることなんてした覚えがなくても、実は何かしでかしていた……ということがあり得るくらいのだから。

 わたしが自宅の庭で野良仕事をしていると、どこからともなく白い猫がやってくる。週に二回ほど顔を合わせるだろうか。その猫は、わたしが作業しているそばまで来ると、ごろんと横になって寝てしまう。場合によっては思いっ切り仰向けという油断し切った姿である。
 今のところ、この猫には嫌われていないようだ。

プロフィール
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士郎
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自己紹介:
茨城県妖怪探検隊の隊長をやっています。
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